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住宅の換気ーダクト式第3種換気vsダクトレス第3種換気

建築中の自宅で、一番悩んだのは、
「換気どうする?」
でした。

結論からいうと、
ダクト式第3種換気
にしました。

日本住環境の「ルフロ400」というシステムです。

住宅の換気方法については、
色んな考え方があって、「これにしておけば大丈夫」
といいきれないところがあります。

ただ、住む人の価値観や地域性などから、
「これが向いてる」
というのはあると思います。

本記事では、自宅の換気方式を選んだことの備忘録を兼ねて、

・換気方式にはどんなものがある?
・ダクト式かダクトレスか?
・ダクト式第3種換気ルフロって?

についてまとめています。

目次

換気方式にはどんなものがある?

建築基準法では、1時間あたり0.5回の換気を行う(部屋の半分の空気が入れ替わる)24時間換気システムを設置が必要です。
では、どんな換気方式があるのでしょうか。

換気方式は大きく分けて3種類

換気種別 第1種換気 第2種換気 第3種換気
イメージ図
給気(入口) 機械(強制) 機械(強制) 自然
排気(出口) 機械(強制) 自然 機械(強制)
気圧 ほぼ均等 正圧になる傾向 負圧になる傾向
使用例 寒冷地や高性能住宅に多い クリーンルーム等 住宅で最も多い
特徴 熱交換し温湿度を調整しながら換気できるので(全熱交換式の場合)環境が安定。 外気を強制的に入れて室内の圧力を高めるので菌が入りにくくなる。結露には注意。 排気のみ機械なのでシンプルでメンテナンスが楽。室温が変動するので経路に注意。
コスト 熱交換による省エネを考慮しても導入コスト、電気代、メンテナンス費用は高め。 住宅ではほぼ採用されないので省略。 排熱は再利用できないが、導入コスト、電気代、メンテナンス費用は安価。

【表1】3つの換気方式の特徴(筆者作成)

大きく3種類に分けられる換気方式と特徴を表にするとこのようになります。
まず、外気の入口である「給気」と、汚れた空気の出口である「排気」部分が、「機械」か「自然」か、その組み合わせで区分されます。

家を身体のようにとらえると、第1種が普通体形、第2種がぽっちゃり体形、第3種がやせ体形、というイメージです。

住宅では第3種換気の採用が多いですが、第1種換気を採用する住宅もあります。
第2種換気は住宅ではほとんど採用されないのでここでは省略します。

第1種換気方式

第1種換気は熱交換をしながら換気します。
室内環境が安定しやすく、熱損失が少ないので、高断熱高気密住宅や寒冷地で採用されやすい傾向があります。
高断熱高気密であることは最低限必要ですが、寒冷地以外の地域であっても第1種換気を採用して温湿度をコントロールできるメリットはあると思います。

空気の温度を和らげてから室内に取り入れ、冷暖房費は下がるので、その点は省エネといえます。
ただ、導入コストや換気システムそのものの電気代は高めで、フィルターの清掃頻度も月に1回程度は必要、もし給気ダクトが汚れると汚染空気が室内に入ってくる懸念、が気にかかるところです。

第3種換気方式

第3種換気は、空気の入口は自然にまかせ、排気のみ機械(ファン)を用いるので導入の敷居が低く、よく使われています。
こちらも気密性が低いとあちこちから隙間風が入ってきてしまうので、気密性は必要です。

外気が熱交換されずに、冷気や暖気がそのまま室内にフィルターを介して入ってくるので、給気口の位置や室間の経路に配慮する必要があります。
エアコンの近くに給気口を設けるという方法もありますが、近すぎるとエアコンの性能が十分に発揮できなくなる場合もあるので経路計画は慎重に行うことが大切です。

換気扇の電気代はごくわずかで、第1種換気と比べると掃除もしやすいものが多いです。

ダクトレスかダクト式か?

第1種換気、第3種換気ともに、「ダクトレス」と「ダクト式」の両方があります。
第1種換気では「ダクト式」のイメージが、第3種では「ダクトレス」のイメージが強いですね。
こちらも図で見ていきましょう。

ダクトレスとダクト式の特徴

ダクトレス ダクト式
第1種換気
特徴 ダクトがないので配ダクト工事とダクトの清掃は減。外壁に複数の換気設備がつくので見た目や清掃箇所の増が難点。 換気設備は1か所、外壁に給排気各1か所の開口ですっきり。ダクト工事とダクトのメンテナンスはかかる。
第3種換気
特徴 複数の給気口からドアの下などを介し空気が動くと想定し、浴室やトイレ等に設けられた換気扇で空気を引っ張り排気。 複数の給気口が付くのはダクトレスと同じ。ダクト工事は必要だがダクトを介して計画的に排気し経路のあいまいさを軽減。

【表2】ダクトレスとダクト式の特徴(筆者作成)

第1種換気と第3種換気の、ダクトレスとダクト式の違いは【表2】のような感じになります。
表の左列、ダクトレスの図は【表1】と同じで、右列にダクト式の場合のイメージを追加しています。

ダクトレスの場合

なじみのある第3種で、換気設備の具体例をみると、
外気の入口にあたる自然給気口の室内側は、このような形です。

風量が入らない状態
(基本は閉めることはない)
カバーを開けると不織布フィルターが見える(お手入れ時) 不織布フィルターを取り外した
ところ(がらんどう)
写真:Amazonリンクより
筆者が過去に居住していた集合住宅で使用していたタイプ

径は100mmか150mmで、外気とはフィルター1枚でつながっているシンプルな構造です。

次に、出口にあたる換気扇(パイプファン)です。
左が一般的なもので、トイレや納戸などに取り付けます。
右は温度・煙センサー付きのものです。
ロフトがあるので、温度上昇時に自動で排気してくれるタイプです。

パナソニック FY-08PFE9D
電気式高気密シャッター
パナソニック FY-08PFK9VD
温度・煙センサー付
写真:Amazonリンクより 製品ページ:FY-08PFE9D/FY-08PFK9VD

これらはいずれも工務店さんから最初に提案いただいた型番で、
「ダクト式だとダクトスペースのロスやダクト内の汚れがあるので、コストがかからずシンプルなダクトレスもおすすめ」
というご意見で、それは「なるほど合理的だな」と思いました。

計画当初は第1種換気の採用も考えており、ダクト式第1種換気よりは安価で給気ダクト汚染の心配がないダクトレス第1種も魅力的でした。
工務店さんの話では、
「ダクト式第1種なら日本スティーベルのLT-50が比較的手に入りやすい」
ということでした。
ただ、よく考えると家の中に複数個ちりばめて配置する必要があり、メンテナンスが大変そうなので、ずぼらな私は候補から外しました。

ダクト式の場合

最初にダクトレス式で検討したあと、最もシステムとしてしっくりきたのが、
ダクト式第3種換気です。

ダクト式第3種換気のイメージ 
出典:日本住環境株式会社 ルフロ400 製品カタログより引用

「給気は自然に、排気はダクトで計画的にしっかり排出する」
という考え方です。

先ほど挙げたダクトレスの第3種換気でも空気の経路をきちんと考えることで、数値的には換気量は足りるし、理論的には機械で引っ張った分だけ給気口から空気が入ってきます。
ただ、部屋と部屋の間の空気がどう動くか、必ずしも予定通りいくとは限らず、換気効率の点で疑問がありました。

なので、主な部屋のそれぞれからダクトで汚染空気を引っ張って、1か所から集中排気するダクト式第3種換気は、私にとっては納得感のあるシステムでした。
コスト面でも、「ダクトレス第3種よりは高いけど、第1種換気よりは手ごろ」
メンテナンスは「換気扇(1台)の清掃は年1回(第1種は月1回程度)」
というバランスもちょうどよかったのです。

建築計画を進めていくと、どうしても「こうしたい」と要望が増えてしまい、
建築費がどんどん上がっていくものです。
なので、価格の面で「ダクトレスにするか?ダクト式にこだわるか?」悩みました。
最終的に、「あとから入れ替えにくい性能に関する事柄の優先度は高く、あとからなんとかできる内装等の優先度は下げる」という考え方から、換気設備についてはわが家の使い方に向いていると思ったダクト式にすることにしました。

ダクト式第3種換気ルフロって?

ダクト式第3種換気もいくつかのメーカーで出していますが、
気密や換気部材の取り扱いで有名な日本住環境株式会社のルフロ400を選びました。

製品についてメーカーに問い合わせて「なるほど」と思ったことや、実際に現場に換気扇が取り付けられたので、その様子を紹介します。

ダクト径が大きい(100mm)

「同じくダクト式第3種換気システムを扱うメーカーはいくつかあるけど、他と比べておすすめしている点はなんでしょうか?」
と聞いてみたところ、
「ダクトの径が100mmと大きく、家全体で6か所から空気を吸うことができる」
という回答を最初にいただきました。

たしかに、

ダクトの最小サイズは内径φ100mm以上を原則とします。
内径φ75mm未満の仕様は避けます。
ダクトのサイズは施工精度の影響を少なくし、ダクト内清掃を可能にするため、
最低サイズは内径φ100mmとすることが推奨されます。

住宅用換気・口調ダクトシステムの設計と施工
一般社団法人北海道建築技術協会 環境・設備・エネルギー研究会 P7より抜粋

のように、ダクト径は大きいほうがよいですね。

給気口のフィルターが厚い/足元が寒くならない

ダクトレス第3種換気では給気口のフィルターは薄くてシンプルなものでしたが、
ルフロでは数センチの厚みがあり、給気口の向きが上向きなので足元が寒くならない(ダウンドラフトの軽減)という特徴があります。

給気フィルターと給気口
出典:日本住環境株式会社 ルフロ400
製品カタログより引用

自然給気口から入る空気は1か所あたり10㎥~15㎥で、「たばこの煙くらいの感覚」ということです。
以前住んでいた集合住宅では、ダクトレス第3種換気を設置しており、給気口から入る外気の冷たさや風切り音が気になって仕方がありませんでした。
「給気口をふさいではいけない」と頭ではわかっていても、ついふさいでいた部屋もありました。
これでは十分な換気はできませんね。
「ふさいでしまいたくなるような換気経路は避けたほうがよい」ということを表しています。

なので、ルフロでは自然給気でありながら足元が寒くなりにくく、温度や音もやわらぐ工夫がされている点はいいなと思った一つです。

なお、給気口の位置は、エアコンの真下はさけつつも、エアコンの近くに設置してほしいと工務店さんにお願いしました。

ファン本体は約15年で交換

決して安くはない換気扇本体。
どれくらい使えるの?というのは気になるところです。
そこで聞いてみたところ、だいたい15年くらいが交換のタイミング、ということでした。

担当者の方が電話口で丁寧に説明してくださり、
取付の時には立ち合い、竣工時には風量の確認に来てくれるというのも信頼感がありました。

ルフロのファンを小屋裏に設置する

着工から2か月ほどが経ち、小屋裏(ロフト)の形が見えた頃、
ルフロ400が搬入されました。
ここからは実際の現場の様子です。

換気ファン本体を設置する小屋裏

換気ファン本体を設置するのは小屋裏です。

 

オリフィス(排気グリル)住宅全体で6か所 天井に設置される

各部屋の天井に設置する、オリフィスと呼ばれる排気グリルから空気を吸い込み、
ダクトを通じて換気ファン本体に集約されて排気されます。

換気ファン本体とフレキシブルダクト

換気ファン本体は15倍発砲の発泡ポリスチレンで出来ており、軽くて硬いです。
素材が進化してますね。

メンテナンス方法を担当の方から教わる

シロッコファンのパーツの取り外し方、戻し方を日本住環境の担当者の方から教わります。
1年に1回くらい掃除してください、と。
そんなに難しくはなさそうです。

2階のダクトスペースまわり

ダクト工事も始まりました。
2階の洗面・トイレの中に、ダクトスペースを設けています。
すぐにぺしゃんこにならなそうなしっかりしたダクトです。

竣工時には実際に換気扇が空気を吸っているか、換気量測定にきてくれるということなので、楽しみです。

まとめ

換気方式の概要を紹介し、次の大きく3つがありました。
・第1種換気(給気:機械、排気:機械)
・第2種換気(給気:機械、排気:自然)
・第3種換気(給気:自然、排気:機械)

住宅では第3種換気の使用例が多く、第1種換気の場合もあります。
使用が多いからといってイコール一番優れているから、というわけではなく
建設地域や建物の気密性能、空気質やメンテナンスに対する施主の考え方などをもとに、
それぞれの家に向いているシステムを選ぶ必要があります。

換気方式はさらに、
・ダクトレスか
・ダクト式か
に分かれます。

比較的温暖な東京の6地域に建設中の自宅(断熱性能UA 0.42 W/㎡K、すきま相当面積 C値想定0.5前後)では、ダクト式第3種換気のルフロ400(日本住環境)を採用しました。

毎日過ごす部屋の空気環境を左右する換気方式は、住宅計画の中でよく検討するべき上位に入る項目だと思います。
「一般的」というものはないと考えて、それぞれの家にあった方法をしっかり決められることをおすすめします。

 

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この記事を書いた人

子育て中の建築士です。
略歴)古民家の改修→民家・まちなみ調査→建築設計・まちづくり→住宅の断熱→企画・デザイン
想像すること、自ら考え手を動かすDIY的思考はくらしの土台になると思っています。

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