工務店に依頼してマイホームを建築中の建築士施主です。
今回は、こちらから希望して実施してもらった中間時の気密測定をふりかえります。
気密測定のこと
断熱性を重視した家づくりでは、気密測定は必須と言いたいくらい、実施したほうがよいと思います。
中間時(断熱工事後、内装工事前)と竣工時の2回行うのがベストですが、
測定費用もかかるので、どちらか1回を選ぶなら中間時の気密測定がおすすめです。
中間時に気密測定をする理由
もし竣工時のみ気密測定を行なう場合、思った以上の数値が出なかった場合でも、
仕上げが終わった段階では原因を特定して改善することは難しいためです。
中間時であれば、予想の値よりちょっと大きいな、という場合でも、
負圧状態のまま、すき間が大きい場所を特定してふさぐといった対応も可能になります。
「修正できる段階で数値を把握して目標に近づけたい」なら中間時の測定になりますが、
「竣工後の建物の性能値を知りたい」という目的であれば、竣工時の測定が必要です。
C値は初回測定で0.9→すき間特定後0.6

今回、わが家では中間時に1回のみ、気密測定を行ないました。
前提条件として、断熱性能はつぎのとおりです。
| 外皮平均熱貫流率 UA:0.42[W/㎡・K] 屋根断熱材:アクアフォーム300mm(λ0.036) 外壁断熱材:アクアフォーム95mm(λ0.036) 床断熱材:ネオマフォーム 90mm(λ0.020) (ピロティ上部:アクアフォーム300mm(λ0.036)) 基礎:スタイロエース 90mm(λ0.028) 窓:APW330 樹脂窓/Low-E複層ガラス/アルゴンガス入(U1.31~1.6) ドア:コンコードS防火(引き戸)(U1.51) |
気密測定の結果、C値は0.6㎠/㎡ でした。
実はこの数値が出る前に測定したときは0.9㎠/㎡でした。
0.5くらいを予想していたので、少し大きいな、という印象でした。
そこで、数値を引き上げている原因となる隙間をさがして塞いだあとに、
再度測定するとC値は0.6㎠/㎡に改善しました。
写真は0.6,0.4, 0.9(下に隠れている)3回の結果で、0.4は実際は塞ぐことのできない玄関引き戸まわりをテープで塞いだ場合の結果で実際とは異なるため、0.6が最終の値となりました。
C値のこと(家の中にどれくらい隙間があいてるか)

【図】C値のイメージ図(筆者作成)
C値(隙間相当面積)は、延床面積に対して、どれくらいのすき間があいているか、割合を数値で表したものです。
すきまの割合、つまり気密性のよしあしを測るもので、
C値が大きい→気密性は低い
C値が小さい→気密性は高い
となります。
上の図で、仮に床面積(建物外皮の実質延床面積 S)が100㎡の住宅のあちこちに小さな隙間があるとします。
その隙間の合計面積(総相当隙間面積 αA)が10㎠であった場合、C値は1となります。
わが家の場合の実測結果は次のとおりです。
| 総相当隙間面積 αA[㎠] | 建物外皮の 実質延床面積 S[㎡] |
隙間相当面積 C[㎠/㎡] |
|
| 初回測定 (断熱工事後すぐ) |
89 | 103.52 | 0.9 |
| 2回目(隙間を埋める& 玄関引き戸まわりも塞ぐ) |
46 | 0.4 | |
| 3回目(隙間を埋める/ 玄関まわりは現状のまま) |
58 | 0.6 |
延べ床面積のこと
延べ床面積(建物外皮の実質延べ床面積 )S[㎡]は次のように算出されています。
気密測定報告書内では、「外皮内容積」と記載されています。
| S=(1階床面積+2階床面積)+(容積÷2.6) |
わが家を例とした計算式
(39.71㎡+48.5㎡)+(39.81㎥÷2.6h)=103.52㎡
この面積は、建築確認申請上の面積とは必ずしも同じではありません。
わが家の場合は、1階は屋外空間であるガレージ部分(建築確認申請では床面積に含む)は気密測定の対象からは除外されます。
2階は同じ面積になりましたが、2階と空間が連続する小屋裏物置の面積は気密測定の対象には含まれません。
どうしてC値を気にするの
断熱性UA値(ユーエーち:外皮平均熱貫流率)は計算で求めることができますが、
気密性C値(シーち:隙間相当面積)は、気密測定技能者が専用の測定器を用いて実測することでしか値を知ることはできません。
ことにC値については、
・国の省エネ基準でも適合義務も説明義務もないこと
・気密性を高めるには施工者の技術力や手間がかかること
・気密測定自体もコストアップとなること
などから、積極的に触れる事業者が少ないという現状があります。
以前は省エネ法の中でC値の規定があったのですが(といっても温暖地で5㎠/㎡という諸外国に比べるとゆるやかな数値)、2009年(平成21年)の省エネ法改正の際にこの項目は除外されています。
理由として国交省ではこのようなことなことを挙げています。
これまで、漏気による熱損失量の削減、壁体内結露の防止の観点から、住宅の気密化について、相当隙間面積を規定していたが、施工技術・施工精度の向上、使用される建材・工法の変化(面材の多用等)により住宅構造形式にかかわらず一定程度の気密性が確保される状況にあること、また、住宅性能表示制度における特別評価方法認定の蓄積により、多様な方法による気密性の確保が可能であることが明らかになってきたことなどから、気密住宅に係る定量的基準については除外する。
出典:https://www.mlit.go.jp/common/000030044.pdf
とはいえ、規定があるとないとでは隙間に対する事業者の意識、住まい手の姿勢にちがいが出てきます。
住宅の質を底上げする意味では、気密性に関する記述は残しておいてほしかった、またはこれから復活してほしい規定です。
では、どうして義務でもない気密測定をわざわざするのでしょうか。
そして、数値が高いとか低いとか気にするのでしょうか。
気密性を把握する必要性を考えてみます。
気密性を高めることのメリットはいくつかありますが、私は特に次の3つの効果を重視しています。
1.計画的に換気できるようになるから
住宅では24時間換気が義務付けられ、1時間あたり0.5回の換気ができる換気設備等を設ける必要があります。
では、換気扇を付けたら、きちんと不快感なく換気されるのかというと、そうではありません。
もし必要以上にすき間があれば、そのから空気が出たり入ったりして、室内を意図した量やルートで空気が動いてくれなくなります。
気密性が確保されていれば、ショートサーキットを起こしてり、すき間風の不快感に悩まされたりすることは少なくなります。
つまり、計画に近い形で換気をすることで、快適な空気環境をキープできます。
換気設備については「住宅の換気ーダクト式第3種換気vsダクトレス第3種換気」に書きましたが、住宅の計画でもっとも重視したほうがよいと思う点のひとつです。
2.冷暖房効率が上がり省エネになるから
予定外のすき間が少ない、ということは室内環境が一定に保たれやすいので、冷房・暖房の効率が上がります。
せっかく断熱性を高めても、バリアーにあたる気密性が低いと断熱の効果は十分に発揮できません。
断熱・気密・換気の3つをセットで性能を確保することで、結果的に省エネになるといえます。
3.家を長もちさせてくれるから
すき間が多いと、そこから冷たい空気や暖かい空気が入るだけでなく、湿気も侵入してきます。
もし表からは見えない壁の中などに湿気が入ったままにしてしまうと、内部結露が起きたり、カビが発生したりする可能性もあります。
気密性を高めて想定外のすき間をできる限り小さくしておくことは、そうした余分な温湿度の流入による結露やカビなどの被害をさけ、家を長持ちさせてくれることにつながります。
ここでは、私が特に気密性を高めることによる効果として重要と思うことを3つ挙げました。
その他のメリットや、気密性のいろはを詳しく知りたい方は、ウェルネストホームの今泉さんの記事(「気密性」が必須な8つの理由)がわかりやすいと思います。
気密測定の手順
中間時の気密測定を行なう日に、施主として測定に立ち会ったので、その様子を順を追って紹介します。
4月下旬のこの日は雨で、室内温度は19.8℃、外気温度は17.1℃。
私は測定の下準備(穴の目張りや測定装置の設置)が完了した段階で現場にうかがいましたが、これらの準備は1時間くらいで終わったようです。
換気扇や排水管などを目張りする
外壁や床を貫通する換気扇や排水管の穴などは目張りをしています。
これらは必要な穴なので、すき間と認識されないようにテープで塞いでおきます。
右の写真は測定装置の真裏に位置する外壁で、細い線にみえる部分で温度と気圧を測っています。
玄関戸や窓は閉めてロックされた状態になっています。
測定装置の設置
横すべり出し窓のところに測定装置が設置されています。
装置以外の空隙はないようにシートとテープでしっかり目張りしています。
気密測定の開始

室内が密閉空間になったところで、いよいよ測定の開始です。
だんだん室内が負圧状態になって、圧力差と通気量の測定量からすき間面積を算出します。
結果が出るまで、どことなく緊張感のある時間……
思ったより数値が出ない場合にどうするのか
初回の測定結果はC値0.9でした。
1.0を切っているので、高気密といえる範囲の数字だとは思うのですが、
工務店さんの過去の実績などから0.5に近い数値を予想していたため、
「すき間を探してみて改善できる場合は手直しをして再度測定する」
という流れになりました。
すき間を特定して補強する
現場監督さん、大工さん、気密測定技術者さんが家の中の歩き回って、
どこかに大きな空気の流れがあるか、手を当てながらすき間を探していきます。
貫通部の配管の穴まわり、床・壁の取り合い部などは問題なさそうでしたが、
いくつかの箇所は念のため気密テープで補強をしていました。
「あ、ここだ」と特に風速を感じたのが、小屋裏収納の屋根の吹付断熱まわりでした。
断熱材の空隙や、棟まわりの取り合いに手をあてると、冷たい風がひゅーと感じます。
気密性が高いはずの吹付断熱で隙間ができた理由

吹付断熱は面材の断熱材と比べると気密性を確保しやすいと言われています。
そのため、「どうしてだろう?」と現場内でも不思議に思う声があがっていました。
話している中で、原因として考えられるのが、
「断熱材を吹き付ける前に垂木間に留め付けた通気スペーサーが、断熱材を吹き付けた際の衝撃で一部がずれてしまったのではないか?」
ということでした。
上の屋根断熱工事中の写真で、垂木の奥に見える段ボール色のものが、通気スペーサー(製品名アクエアー)です。
これが浮いた状態になって、その隙間から空気が侵入してくるという仮説です。
また、施工時に厚めに吹き付けられた断熱材を垂木の表面の位置でカットしてありますが、その中で空隙が大きい部分もところどころにありそうです。
そこで、風を感じるところに根気よく気密テープを貼っていき、すき間を減らしていきました。
玄関引き戸もすき間が大きめ(C値差0.2)
もうひとつ、すき間を感じたのは玄関の引き戸まわりです。
わが家では、「バタン」と開け閉めするより「す~」っと開け閉めしたかったので、
ドアではなく引き戸にしました。
一般的に、引き戸タイプはドアタイプより気密性に劣るのはわかっていたものの、
負圧状態においては、建具まわりに風圧を強く感じました。
ふだんの生活ではここまで完全な負圧状態になるわけではないので、風圧はさほど気にならないかもしれません。
断熱材まわりを目張りした上に、更に引き戸まわりを目張りして気密測定をしたらC値は0.4まで向上しました。
玄関引き戸はこれ以上気密性を高めることは不可能なので、目張りを解いて再測定するとC値は0.6。
この住宅の場合では玄関引き戸のすき間の影響がC値差で約0.2とわかりました。
結構大きい違いですね。
住宅の条件によって異なるので、玄関戸の開閉方式の違いによる隙間の影響差は0.2と断定できるおものではありませんが、気密性の高さを追求するなら、玄関戸は引き戸ではなくドア、と言えそうです。
ただ、そのことを実測で理解したあとでも、気密性の数値を優先してドアにするという選択肢はなかったと思います。
「原因不明のすき間はダメだけど、納得できるすき間はOK」と、改めて実感することができました。
すき間を手直し後の再測定(C値0.6)

右は、
「隙間を埋める&玄関引き戸まわりも塞ぐ」条件で行った2回目の測定結果(C値0.4)
左は、
「隙間を埋める&玄関まわりは現状のまま」の条件で行った3回目の測定結果(C値0.6)
です。
玄関戸まわりも塞いだ2回目の測定結果は現実の使い勝手とは乖離するので、
気密測定報告書に採用する数値は、3回目の C値0.6 にしてもらいました。
(つまり、希望すれば報告書上はC値0.4にもなりえるのだなぁと思いつつ…)
後日談

後日、現場監督さんから次の2つの方針について連絡をいただきました。
・吹付断熱工事はもう一度補修で吹付を行う
・小屋裏は(もともとは予定していなかったが)気密シートを貼る
気密測定時の補修で気密性能は想定に近い数値になりましたが、
念のためということで対応してくださるそうです。
工務店さんの誠実な姿勢に頭が下がる思いです。
完成時の気密測定を行なう予定はないので、この家の気密性能の最終値は知りえませんが、
0.6よりは確実によくなりそうです。
気密測定まとめ
マイホーム建築中の中間時に気密測定をしたことから、測定から手直しの流れ、C値の数字や仕様をどう考えるかなどについて、次の項目にふれました。
・高性能住宅を建築するときには、断熱・気密・換気をセットで性能を考える
・気密測定をするなら中間時、竣工時の2回。どちらか1回なら中間時がおすすめ
・中間時の気密測定では、目標の数値に満たない場合に手直しの余地がある
・高気密では、計画的に換気できる、冷暖房効率が上がる、家が長持ちするなどのメリットがある
・建具の開閉方式(ドアvs引き戸)によってはC値に大きな差が生じることもある
・納得のできるすき間はOKと考える
一方で、気密性を示すC値をひたすら小さくすることにこだわりすぎないことも大事だと思います。
わが家で気密性が劣る玄関引き戸を使いたかったように、それぞれのライフスタイルに応じて欠かせない要素もあるかもしれません。
数値のみを追求すれば、家づくりの選択肢はせばめられ、地域性や個性が失われかねません。
性能を確保するためには施工者の技術力によるところが大きいですが、家づくりのしくみをできる限り理解した上で、どのような選択をするかを決めるのは、最終的には住まい手の責任であり、楽しみだと思います。










