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家づくりの選択肢ー屋根は「立て平葺き」か「一文字葺き」か?

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自宅を建て替え中の建築士による家づくりブログです。
設計・施工は技術力に信頼のおける地域の工務店に依頼して進行しています。

注文住宅では、設計段階から竣工まで、たくさんの選択肢があります。
自宅であるウメハウスで選択を迫られた実際の例から、
家づくりではどんな選択をする場面があるのか、
どんな風に考えて決めていくのかを紹介します。

今回は屋根の「葺き方」についてです。
近年の傾向を踏まえながら、金属板葺きのうち
「立て平葺き」か「一文字葺き」の二択の場面で
立て平葺き」を選んだ理由を書いています。

目次

屋根材の種類と葺き方

屋根材の種類、葺き方にはどんなものがあるか、
基本をみていきましょう。

屋根材の主流は金属板

屋根材市場は拡大しており、
金属屋根材が市場全体の63.2%を占有していると、
矢野経済研究所の「屋根材市場に関する調査(2022年)」が
示しています。


出典)矢野経済研究所「2021年度 国内屋根材市場における素材別シェア

これは住宅だけでなく倉庫等も含みます。
風が強かったり、伝統を守るためなどに
瓦屋根が多い地域もありますが、
全国的に均すと、金属板が主流ということになります。

ここでは、金属葺についてみていきます。

葺き方はさまざま

金属板の葺き方はさまざまですが、
特徴的なものをまとめると次のようになります。

瓦棒葺き 立て平葺き(立てハゼ葺き) 参考)折板葺き(大型物件等)
横葺き 一文字葺き(横葺きの一種) 参考)菱葺き

図版引用)一社)日本金属屋根協会「屋根と外壁のかたち

一般的に、立て平葺きは、瓦棒葺きや横葺きよりも勾配を緩くすることができます。
横葺き(一文字葺き)は曲線などを形成することもでき、寺社建築の唐破風のような曲線を構成したりします。

洗足学園音楽大学 シルバーマウンテン(神奈川県)のように球体まで可能にしています。
これは圧巻ですね。

図版引用)一社)日本金属屋根協会「屋根と外壁のかたち」(同前)

「立て平葺き」か「一文字葺き」か

たくさんの材料、葺き方がある中で、
「すべての選択肢の中からどれにしましょうか?」
という話にはなりません。

その建物の立地や近隣との調和、屋根勾配などを考慮して、
ビルダーさんの推奨品などの中から選んでいくことになると思います。
標準仕様で既に決まっている場合もあるかもしれません。

ウメハウスでは、
「立て平葺き」か「一文字葺き」の二択を提示されたので、
そのことに触れていきます。

斜線制限で決まる合理的な屋根形状


ウメハウスは、都内の北側の高さが厳しい高度地区内(建築基準法第58条の高度地区)
にあるため、限られた土地をめいいっぱい使って、
この斜めのラインを超えないようにする必要がありました。

上図は計画当初、設計を工務店に依頼する前に
自分で理想の屋根形状を書いてみたものです。
私の屋根のかたちの理想は伝統的民家にみられる、
壁の比率に対して屋根の比率が極力大きい
頭でっかちのプロポーション」でしたので、
この斜線制限の中で可能な民家に近い形を作ると、
このような寄棟に近い形状となります。

もし、この形状で計画が進行したら、
葺き方は「一文字葺き」一択になったと思います。

ただ、この理想の屋根形状では屋根面積が相当大きくなり、
今回の計画における経済的合理性は到底ありませんでした。
そのため、この時に考えた基本的な部屋の配置などをたたき台として、
工務店に設計を依頼し、できた合理的な屋根形状が下図のような切妻屋根です。

依頼した工務店さんは技術力と意匠性を得意としています。
使う部材を想定しながら桁の高さを抑えて、できる限り予算に近づけるよう、
無駄なく構造を形成するよう考えていただきました。

土地の形と建物の形が変形なので、
全体のイメージをつかむためにパースを起こしてみました。
屋根の比率に対して壁が大きくなってしまったので、
バルコニーや外壁等の意匠を工夫して意匠のバランスをとっていく
ことになりました。

立て平葺きにすると天井が3㎝低くなる?

切妻屋根をガルバリウム鋼板で葺きますが、
葺き方の選択肢の一つが「立て平葺き」でした。
これは、金属平板葺きの一つで、
垂木に釘止めした吊子を長尺板の流れ方向の
継ぎ目に巻き込んで立てハゼとする方式です。

縦線が細くシャープな印象があり、
凹凸があることで軒先に変化が出るデザインが好みでした。
切妻屋根であれば立て平葺きにしたいと考えていました。

ただ、一つ気になる注釈がありました。
北側の斜線制限ぎりぎりで屋根高さが決まっているため、
台所部分にあたる下図のAの高さが1.8m強と
余裕がある高さではありません。
立て平葺きにすると、立てたハゼの分、
A点の天井が約3cm低くなってしまうというのです。

屋根のデザインを優先するか、天井高さのゆとりを優先するか?
高さ制限の厳しい中で、今回のケースではこの2択について5分ほど考えましたが、
「好き」を優先して立て平葺きにしました。
ビルダーさんや流通によって価格は異なりますが、
今回の2択に際しては、立て平葺きと一文字葺きのどちらを選んでも同じでした。

仕上げの違いによる雨仕舞いや風圧力への影響の違いもゼロではありませんが、
4.5寸勾配あれば大きな違いではないと考えました。

一文字葺きは自由

もう一つの選択肢が、「一文字葺き(Dutch-lap method)」で、
金属板などを屋根面の水平方向に一直線(一の字)になるように葺く方法です。

一文字葺きは曲面に沿って屋根を葺くことができ、
「自由」を実現できる葺き方だと思います。

このデザインもシンプルでよいのですが、
今回のような屋根形状自体がシンプルな切妻の場合は
立て平葺きのほうが表情が出てよさそうです。

シミュレーションはパースで

パースでシミュレーションしてみました。

立て平葺きにした場合のイメージ


縦方向のハゼが屋根に表情をプラスしてくれます。

一文字葺きにした場合のイメージ


シックな印象に見えます。

色を変えた場合のイメージ

青系、赤系、緑系、いぶし銀。
色の選択で家の印象が大きく変わることがわかります。
右下がわが家で決めた「いぶし銀」のイメージです。

色は、あらかじめ工務店の施工実例や近隣の事例をいくつか見た上で、
現場で大き目の見本を見せていただいて決めました。
左が屋根(立て平葺き)の色:いぶし銀
右が外壁(小波)の色:ファインブラック
※いずれもニスクPro

まとめ

注文住宅の設計で出てくる選択の場面の実例として、
屋根の葺き方で「立て平葺き」か「一文字葺き」の二択があったときに
どのように考えて選択したかを取り上げました。
屋根材の主流である金属板の葺き方はさまざまです。
自宅(ウメハウス)ではシンプルな屋根形状に対して、
表面と軒先に変化が出る「立て平葺き」にしました。
それぞれの家の個性に合った葺き方を検討してみていただけたらと思います。

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この記事を書いた人

コンサルタント企業で働く建築士です。
小学3年生の男の子を育てているシングルマザー。
息子との日々の暮らしや、建築のことなどを綴っています。

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