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【福島市民家園】文化財みどころ5選と古民家カフェ

全国各地にある民家園、たくさんの民家があって、どれも同じに見えがち…

そこで本記事では、
「福島市民家園」にある9棟の古民家のなかから、
「民家みどころ5選
を建築士の視点から
紹介したいと思います。

園内には古民家カフェや子供が楽しめる施設もありますので、
その概要もまとめています。
参考になれば幸いです。

目次

福島市民家園ってどんなところ?

民家園の場所と概要です。

あづま総合運動公園の中、トリムの森の近くにあります


出典:福島市民家園公式ホームページ「利用案内」※筆者にて図版レイアウト調整

福島駅から西へ車で12kmほど行ったところに、「あづま総合運動公園」という大きな公園があります。

この公園には、スタジアム、陸上競技場、テニスコート、野球場、バラ園、室内プール、クライミング施設、屋外遊具などスポーツや自然に関する施設が集合しています。
ガイドマップによると、長手方向にして4km以上の広さです。

この公園内の一角、トリムの森の近くに、福島市民家園があり、9棟の伝統的民家が屋外展示され、内部を見学できるようになっています。

利用料は無料です。

中に入れる古民家は9棟、すべてが文化財


出典:福島市民家園公式ホームページ「施設案内

筆者が訪れたのは雪のちらつく冬の日で、ひと気もまばらでした。
寒冷地の当時の暮らしぶりを想像するには、こんな日もいいのかもしれません。

散策しながら全棟を見学し、展示館で遊び、カフェで定食をいただく、というように2時間ほどあると園内をゆっくりと過ごしました。

施設の数は21か所。
そのうち、内部を見学することができる古民家は9棟です。
9棟の民家は、全てが国、県、市いずれかの指定文化財に指定されています。

昔遊びができる展示館


展示館では、民家の複製模型や建築儀礼、民族に関する展示のほか、生活の技術伝承を目的とした体験広場があります。

子どもも、福笑い、だるま落とし、すごろく、など片っぱしから遊んでいました。

こたつ席のある古民家カフェ

園内には、古民家カフェ「にぎ和伊カフェむろいし」があります。
冬はこたつ席がありました。

ここでは、福島の郷土食をはじめとする食事や軽食を古民家の中で楽しむことができます。
写真は注文した「週替わりパスタセット(鍋焼きトマトチーズパスタ)」と「特製あいがけカレーセット」!見た目と味のバランスがよく、おすすめのカフェです。

では、民家園の民家リストとみどころ5選を紹介していきます。

民家園の古民家みどころ5選

福島市民家園にある古民家9棟の概要と、みどころを5つ選んで紹介します。
紹介しきれなかった民家もそれぞれに味わいがあるので、
ぜひ他の民家もコンプリートしてみてほしいです。

内部を見学できる古民家

民家園には、外観のみ見学できるものと、建物の中に入って見学できるものがあります。
園内にある21か所の施設のうち、内に入って見学ができる古民家は次の9棟です。

文化財の種別をみてみると、
国指定重要文化財が1棟
・福島県指定重要文化財が3棟
・福島市指定有形文化財が5棟
となっています。

いずれの民家も福島県内の現在地から離れた場所にあったものを移築してきたもので、江戸中期から明治期に建築された建物です。

農民住宅の割合が多いですが、宿店・割烹旅館、芝居小屋も民家のカテゴリとみなしました。

見所
紹介
名称 文化財種別 元の建築場所 建築年代 特徴
②旧小野家 市指定
有形文化財
伊達郡伊達町 明治6~7年頃(1873-1874) 養蚕農家
その5 ④旧筧家宿店 市指定
有形文化財
福島市上鳥渡 江戸末期(宿店部分は明治10年代に増築) 宿店
⑤元客自軒 市指定
有形文化財
福島市北町 江戸後期 割烹旅館。略式化した数寄屋造の手法。
その2 ⑥旧広瀬座 国指定
重要文化財
伊達郡梁川町 明治20年頃 回り舞台のある芝居小屋。木羽葺き。蔀戸。
⑧旧阿部家 県指定
重要文化財
福島市大笹 江戸中期
(18世紀後半)
普通農民住宅。なかのまが土座。ざしき以外の側面を大壁で閉じる古い手法。
その3 ⑨旧渡辺家 市指定
有形文化財
福島市上名倉 江戸後期
(19世紀初期)
庄屋層の農民住宅。とおりまがある。
⑫旧奈良輪家 県指定
重要文化財
福島市山田 江戸中期
(18世紀中頃)
村役層の農民住宅と推定。
その1 ⑯旧菅野家 県指定
重要文化財
福島市松川町 江戸時代中期(18世紀後半早々) 普通農民住宅。なかのまは板間。堺は閉鎖的で古式。
その4 ⑱旧馬場家 市指定
重要文化財
南会津郡南郷村 文化4~5年(1807-1808) 豪雪地帯の民家。中門造

表)福島市民家園の内部を見学できる古民家リスト/園内の紹介看板を参考に筆者作成
※名称の〇付数字は、福島市民家園公式ホームページの施設案内ページ内、「復原施設等」に記載のある①~㉑の施設番号

みどころその1 旧菅野家住宅

みどころその1は、旧菅野家住宅です。
理由は2つ。
・民家のなかでも「普通農家」の住宅である
・その中でも「古い形式」を有している
具体的にみていきましょう。

写真左)旧菅野家住宅:正面を上手側よりみる 写真右)旧菅野家住宅:下手側面および背面 筆者撮影

正面には、「なかのま」の大戸、「なかのま」と「ざしき」の建具があり、ざしきの壁は内側に引っ込んでいます。
正面以外の側面と背面は、すべて柱を表さない大壁になっており、
このシンプルな外観から、冬の寒さと向き合う民家の強さのようなものを感じます。


図)旧菅野家住宅平面図/福島市民家園内設置の案内看板より転載

間取りをみると、「ざしき」と「なんど」の境壁も土壁で、閉鎖的です。
家全体にしめる土間の割合が大きいことや、上屋柱の存在も目立ちます。
「なかのま」が板敷となっている点については次のような解説があり、
先進的な位置づけにあることがわかります。

後に建築された旧阿部家と異なり、「なかのま」がすでに板敷になっており、県北地方の農民住宅の居間部分への板床普及の時期を示す遺構としても注目される。

福島市民家園内設置の案内看板より転載

写真左)旧菅野家住宅:どまの上屋柱 写真右)旧菅野家住宅:どまからなかのまを見る 筆者撮影

「どま」と「なかのま」の外周から半間内側に、上屋柱が建っているのがわかります。
この柱や、小屋組の梁の断面は太くはなく、低めの高さにあります。
これらの要素からも古い要素を感じることができます。

みどころその2 旧広瀬座

みどころその2は、旧広瀬座です。
福島市民家園の中で唯一、国の重要文化財に指定されている建物で、
数少ない芝居小屋の遺構として貴重です。
のちに映画館に転用されていましたが、移築の際に創建当時の姿に復原されました。
国内に現存する芝居小屋としては、康楽館(秋田県)、八千代座(熊本県)、内子座(愛媛県)等が有名です。

写真左)旧広瀬座:外観 写真右)旧広瀬座:舞台と客席 筆者撮影

外部は柱や梁を表した真壁造で、全面に板を張った落ち着きのある正面は、現代の意匠に通じるものがあります。
特徴である回り舞台は、舞台の下にあるため見ることはできません。

写真左)旧広瀬座:上手通路と桟敷 写真右)旧広瀬座:木戸口 筆者撮影

桟敷の様子と、入口の木戸です。
建具は上から吊られており、平安時代の寝殿造に端を発する蔀戸(しとみど)になっています。
格子は一部分のみで板が多いので、「板蔀」に近いです。

図)旧広瀬座平面図/福島市民家園内設置の案内看板より転載

平面図をみると、「うらはなみち」「かつらべや」など、当時の様子を想像してみたくなる部屋の名前が並んでいます。

みどころその3 旧渡辺家住宅

みどころその3は、旧渡辺家住宅です。
その1で紹介した旧菅野家住宅は普通農民層の住宅でしたが、旧渡辺家住宅は庄屋層の住宅です。
建築年代は、菅野家が江戸中期に対し、渡辺家は江戸後期と、時代が下ります。
平面規模、高さいずれも大きく、この2つの住宅を行き来してみると、その空間の違いがはっきりわかります。

写真 左上)旧渡辺家住宅:外観 左下)旧渡辺家住宅:どま
右)旧渡辺家住宅:「おかみ」と「通りの間」を見る 筆者撮影

どまの入口が半間奥に入り、軒下の下屋柱の内側に生活の用具が並べられています。
入母屋造りの端正な外観と、板敷を備えた広い土間、座敷のしつらいなどから、庄屋層の住宅らしさを感じることができます。
正面側に、内縁のような「とおりのま」があります。

写真左)旧渡辺家住宅:下手側面と背面 写真右)旧渡辺家住宅:3本溝に3枚建具 筆者撮影

下手側面と背面は菅野家に類似して閉鎖的ですが、背面に土間の出入口が設けられています。
1間の敷居に3本の溝があり、それに対して障子戸・雨戸・雨戸の3枚の建具が入っているのは、古い形式の一つです。

図)旧渡辺家住宅平面図/福島市民家園内設置の案内看板より転載

菅野家では「なかのま」と呼ばれた生活の間は「おかみ」に、「ざしき」は「じょうだん」と呼び方が異なります。
どまの独立柱は3本のみで、菅野家の半分の数です。

みどころその4 旧馬場家住宅

みどころその4は、旧馬場家住宅です。
この民家はもともとの建築地が旧南郷村(現南会津町)というところにあり、そこは新潟県に近い豪雪地帯です。
そのため、雪に耐える建物の工夫という点で、先に紹介した菅野家や渡辺家と大きく異なり、
中門造(ちゅうもんづくり)と呼ばれる形式をもっています。

民家園という特殊な条件下でなければ、このように気候風土の大きく異なる民家同士が隣り合って建つことはないでしょう。
おもしろいですね。

写真左)旧馬場家住宅:外観 写真右)旧馬場家住宅:内部 筆者撮影

建物は母屋に中門がL型に突き出すようにとりつき、うまやと便所の機能を有しています。
屋根を切妻造り(手を合わせたような形)にして、雪が両脇に落ちるようになっています。

写真左)旧馬場家住宅:うまや 写真中)旧馬場家住宅:べんじょ 写真右)旧馬場家住宅:とおりまのべんじょ 筆者撮影

中門の中には、うまや、板に穴をあけただけのべんじょ、とおりまと、その一角には板敷のべんじょがあります。

図)旧馬場家住宅平面図/福島市民家園内設置の案内看板より転載

「にや」は「にわ」、「くしゃくま」は幅が「九尺間」のことと思われます。
「みんじゃ」「おめい」「でどのざしき」など独自の呼び名が散見されます。

みどころその5 旧筧家宿店

みどころその5は、旧筧家宿店です。
江戸末期建築の主屋に、街道沿いの宿店として開業するため、明治期に宿店部を主屋に鍵型にとりつくように増築されたものです。
主屋は解体されて現存せず、店部分のみ移築されています。
厚みのある萱葺屋根が、開口部が多く軽やかに見える躯体の家に載っているバランスがなんとも絶妙です。

写真左)旧筧家宿店:外観(みせとざしき) 写真右上)旧筧家宿店:外観(みせ) 写真右)旧筧家宿店:外観(旧主屋側) 筆者撮影

「とこ」がある面を除いて、壁はほとんどありません。

写真左)旧筧家宿店:みせ 写真右)旧筧家宿店:板を落とし込む 筆者撮影

店内の梁組は明治期の建築らしく製材された梁と根太による合理的な構造です。
柱の側面には縦方向に溝があり、その溝に板を上から落とし込んでいく方式になっています。
全てを開け放すこともでき、写真のように下方のみを残して腰窓のように開くこともできます。

図)旧筧家宿店平面図/福島市民家園内設置の案内看板より転載

まとめと民家園案内

福島市民家園には、県内各地から移築されてきた古民家が9棟あります。

どんな層が住んでいた住宅なのか
時代や建築場所によってどんな作り方の違いがあるか
構造や室名の違い
など、歴史的視点からではなく、建築的視点でみどころを5つ紹介しました。

訪問の際の参考になれば幸いです。

福島市民家園(2024年9月時点)

・場所:福島市上名倉字大石前地内(あづま総合運動公園内)
・開園時間:午前9時~午後4時30分
・休館日:毎週火曜日(火曜日が祝祭日の場合はその翌平日)、年末年始(12月29日~1月3日)
・入館料:無料
・ 交通アクセス:
JR福島駅よりタクシーで約25分
JR福島駅より福島交通バスで約30分、徒歩約15分
(JR福島駅東口、「佐原又は四季の里」行き7番から乗車、「室石」下車)
東北自動車道福島西インターより車で約10分
駐車場は、あづま総合運動公園サイクルスポーツ広場と共同の
民家園駐車場(駐車台数372台)を利用

参考サイト・文献(外部ウィンドウで外部サイトを開きます)
1)福島市民家園
2)福島市「福島市の文化財
3)福島県教育委員会「ふくしまの文化財情報
4)文化遺産オンライン
5)国指定文化財データベース

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この記事を書いた人

コンサルタント企業で働く建築士です。
小学3年生の男の子を育てているシングルマザー。
息子との日々の暮らしや、建築のことなどを綴っています。

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